Since February 19th, 1996
近況(1996年度)
12月23日付。リブレットにキャノンのカメラカードCE300がつながることが分かって遊んでいる。これからは画像もここに添付できるようになった
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
また二ヶ月近く空いてしまった。
11月23日に表参道のハナエ・モリ・ビルでニフティ・サーブ社主催の「ネットワーク・イン・97」が開かれて出演した。松岡正剛さんの編集工学研究所の企画で、フリーマン・ダイソンのビデオ・メッセージから始まり、総勢30名以上の出演者が分単位の超過密スケジュールで舞台に上がるイベントで、金子郁容さんと松岡さんの司会で、鳩山由紀夫から大槻ケンヂまで、政治家、芸能人、スポーツ選手、建築家、デザイナー、学者といった幅広い領域のゲストが出演した。「ネットワーク・コミュニティ」をめぐる催しなのだが、少し盛りだくさんすぎるきらいはあるにせよ面白かった。それにしても大学人がこういう場所に出て他の領域の人々に負けるのは悔しい。パフォーマンスの芸というものもやはり必要だと思ったりもする。
12月14,15日の両日、帝塚山学院大学美学美術史研究室が主催した国際ワークショップ「美術史と他者」に顔を出した。高野山の宿坊で2日間連続で開かれたハードな会議だったが、関西を中心とする美術史学者や美学者を始め多くの大学院生による90名程度の参加で大盛況だったと言えるだろう。セッションの方は、加須屋誠、佐伯順子(帝塚山学院大)、稲賀繁美(三重大学)、谷川渥(國學院大學)、千野香織(学習院大学)、ジョン・クラーク(シドニー大学)、ノーマン・ブライソン(ハーバード大)の7人の発表を中心にしたものだったが、全体としてとても面白いものだった。というよりも、それぞれの発表者のポジションの違いのコントラストがセッションを通してきわめて明確になり、その限界や可能性が浮き彫りになってくるのである。この中で圧倒的に面白かったのは稲賀繁美さんの発表だった。こういうタイプの研究者はとても珍しい。彼と比べると他のパネリストは単なる専門家にしか見えなくなってしまう。
この会の懇親会では沢山の若い人たちと話したが、驚いたのは西洋美術史、とりわけ19世紀や20世紀を専攻している若い大学院生がめちゃくちゃ沢山いるということだった。しかも、そのかなりの部分は女性である。いつのまにか、近現代美術史はメジャーになっていたのだ。これもやはりバブルの置きみやげなのだろうか。お客さんが増えるのはいいことだが、英文や国文、心理学や社会学並に「大衆化」しただけといった方がいいのかもしれない。おかげさまで「美学」は相変わらずマイナーなようだ。
ちくま新書の大越愛子『フェミニズム入門』は面白かった。手際よくフェミニズムの展開やその射程をまとめてありとてもわかりやすい。但し、フェミニズム内の立場の多様性や、それらに対する批判に対する反批判は余り理性的なものとは思えない。フェミニズムの内と外とを区別し、内向けの論争と外向けの建て前(フェミニズム運動の一貫性と連帯)を守るのは難しいだろう。この人は他の社会学系フェミニストと比べれば随分頭のいい人だとは思うが、それでも党派主義にこりかたまったヒステリー型の言説構成から抜け出しきれてはいない。というわけで、例の「ジェンダー--記憶の淵から」展のような反動的な企画にも「戦略的に」乗ってしまうのであろう。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
11月3日付。10月は何だか知らないがめちゃくちゃ移動が多くて忙しかった。 まず、9月は大学院入試やら会議やらで時間を取られ、そのまま10月に突入。11日から13日までは大阪の関西大学での美学会全国大会。久々に発表をしてみた。この発表については、大阪学院短期大学の加藤君が早速レヴューしてくれているので、是非こちらも見て下さい。これで少し気をよくして、ここにも載せることにしました。
反応の方はまずまずでしたが、昔と違って顔色を変えて怒る人がいなくなってしまったのが寂しい。年齢を重ねるというのはこういうことなのでしょう。本人としてはいつまでも生意気な青二才で居られる方がいいのだが、周りがそう見てくれなくなる。
そのまま14日に特急白鳥で新潟に移動。新潟大学人文学部で5日間の集中講義を行いました。学生は熱心だけどおとなくして少し寂しかった。門限のある宿舎で町の中心からも遠く退屈でしたが、それでも浜辺に出て佐渡を目の前にする景色には感動。人々の表情や天候に地域性を感じました。それにしても今や全国各地にコギャルが居る。恐るべきことだ。
さらに次の週末は前任校の帝塚山学院大学美学美術史科30周年記念同窓会に参加。25周年は自分が幹事をしただけに、パスするわけにも行かなかったのだが、いろんな人に会えて楽しかった。旧室井ゼミの同窓生は少なかったのだが、二次会、三次会で現れる人も多く、難波に河岸を変えてから、人数がどんどん膨れ上がり盛り上がる。結局1:00過ぎまでになり、そのままビジネス・ホテルに泊まる。卒業生達もなかなか頑張っていて頼もしい。
京都国立近代美術館の展覧会「プロジェクト・フォア・サバイバル」が素晴らしい。キューレータの河本さんは「移行するイメージ」以来の展覧会だが、しっかりとした思想が背後に流れており、言説として自律しうる希有の展覧会となっている。学会の時と同窓会の時と二度見に行くことができたが、展覧会をテクストとして自覚できているキューレータが日本に何人居ると言えるのだろうという思いを新たにした。東京の竹橋でも12月から開催するそうなので、できる限り協力したいと思う。
忙しい上に、コンピュータのトラブルが続き、余計な時間ばかり取られてしまった。大学の富士通、Libretto、家のマックと三台ともシステム入れ替えをしなくてはならないという絶望的な事態を引き起こしてしまったのだ。というわけで、仕事が随分遅れてしまっている。待ってもらっている方々、申し訳ありません。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
9月13日付。「女性・ネイティヴ・他者」(岩波)のトリン・T・ミンハとの対談の計画があったのだが流れる。恵比寿の写真美術館で開かれている「ジェンダー 記憶の淵から」展で彼女の映画が上映されているので見にいく。かなり期待はずれだった。特に「愛の物語」というフィクションだが、ナルシズムに陥っている。本が面白かったのに残念だ。それにしてもこの展覧会は余りにひどい。従軍慰安婦や強制収容所、黒人のイメージ、病気の身体、ファット・フェミニズムと、要するに「虐げられたものの叫び」風のものばかり並べてあり、企画者のセンスの悪さと問題意識のなさが目立つ。慶応アートセンターとイメージ&ジェンダー研究会というのは一体何を研究しているのやら。この話はいずれ別の場所に書くことになっているが、それにしてもひどい。
阿部出版『版画芸術』で連載「プリンティング・ザ・ワールド」を開始した。版画の世界のことなどわからないので、版や刷ということで、化石・ウィルス・遺伝子・活版・押し花・写真・プリンタ・ファックス等々何でも扱えるようにしてしまった。
そういえば春から「啓林」という教科書会社が中・高の数学・理科の先生に配っている雑誌にも「学ぶことの変容--マルチメディアと知識」という変な連載をしているのであった。いかにも教育学部の教員らしくていいかもしれない。こちらはあと3回で終了の予定。
教育学部と言えば、ようやく文部省の省議で横浜国大の新学部創設が内定したらしい。文部省の指導ということで学部名称は「教育人間科学部」(げ!)となり、学校教育課程・地球環境課程・マルチメディア文化課程・国際共生社会課程の4課程で行くことになった。マルチメディア文化課程というのを主として担当するわけだが、この名前も文部省から押し付けられたもの。これまでの苦労を考えればやっとここまで来たというところだが、これから準備も大変である。既に入試やカリキュラムをめぐって会議の日程がつまっている。
7月からNiftyserveが主催して編集工学研究所が取り仕切っている「ネットワーク・コミュニティ・フォーラム」の第二期が始まる。金子郁容さんが座長のような会だが、今年は仕方ないのでぼくもプロジェクトを組んでいく予定。既に若手を集めてオンライン研究会を始動している。
8/21-22まで上諏訪で開かれた宗教と社会学会の研究会「情報時代と宗教」にゲストで参加。ほとんど缶詰め状態でセッション。若手が面白くて結構楽しめた。東京工業大学の上田紀行氏と会って、アメリカの多重人格治療の話を聞く。温泉�ヘ入れたが、ほとんどどこにも行けなかった。
今年はマンションの自治会の町内会担当ということで、夏祭で御輿をかつがされた。平日に祭をやるので年寄りが多く、御輿は常に人手不足らしい。背の高さが合わないので真面目にやっていると強烈に肩が痛い。めったにないことで面白かったのだが、二日ほど体が痛くて動くのが大変だった。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
8/13付。ここのページの記載方法を変え、新しいものから古いものへと配置するようにしました。大学も夏休みに入りようやく楽になります。
今年は海外は無し。小さい研究会で話すくらいで、たまった原稿をこなしたいと思います。10月には美学会全国大会で発表します。Niftyの研究会の第二期がスタート。11月23日にはまた大規模なイベントが準備されているようです。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
8月3日付「図書新聞」表紙で吉見俊哉さんとの対談をやりました。
このところ大学改革のコンセプト・リーダーになってしまい連日会議ですっかりばてています。これを成功させてゆっくりしたい。新しいカリキュラムや人事で頭の中が一杯になっています。
その人事も終わり、後は各省庁を通過させるだけ。多分大丈夫だと思いますが、後に引けない状態ですので気が抜けません。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
5/18,19に、京都の同志社大学で開かれた日本記号学会大会に参加しました。中村雄二郎さんの講演会で久々に山口昌男さんも顔を出してきました。19日のシンポジウムでは、これまた久しぶりに武邑光裕さんと再会。京都造形芸術大学のメディア美学研究所長とのこと。「これからは後進の指導にあたる」と言っていましたが、武邑さんは昔から貫禄はあるものの私と同年齢。考え込んでしまった。
オーストラリアの美術雑誌「Art AsiaPacific」Vol.3 No.1 に" The postcolonial Body in Contemporary Japanese Art " を発表しました。原文はこのホームページの英語版から読み出すことができます。9月のクイーンズランドで開かれるトリエンナーレには是非行きたいと思っています。
今年から明治学院大学芸術学科と東京芸術大学美術学科での非常勤を始めました。品川から上野へと一日の間に移動することになりますが、月曜日なので美術館も動物園も閉まっているのが寂しい。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
4/20に、東京都現代美術館のウォーホル展記念シンポジウムに、ピッツバーグのウォーホル美術館の学芸員Mark Francis, ホイットニーの学芸員Callie Angell, 画廊主Irving Blum、美術批評家中村敬治さんと共にパネリストとして出演しました。「ウォーホルと90年代のアートワールド」というタイトルでレクチャー。ディスカッションはかみ合わなかったがそれなりに面白かった。ウォーホル展の目標動員数は20万人だそうですが、どうなるか注目したいと思います。
4/1に衝突事故を起こしました。幸い両者とも怪我はありませんでしたが車は全損。保険のこととか色々勉強になりました。厄年という噂もありますが、こちらに過失はほとんどなかったということで過失相殺1:9に落ちつきそうです。再び中古車を購入。今度はオヤジ車のローレルです。
昨年5月に横浜の開港記念会館で行った日本記号学会の記録を中心とした、『記号学研究16 マルチカルチュラリズムの記号論』が東海大学出版局から公刊されました。今福龍太、松岡正剛、姜尚中、上田信といった顔ぶれの面白い論集になっています。またアムステルダムのヤン・N・ピータースによる秀逸なミュージアム論「多文化主義と美術館」も訳出してあります。是非ご一読ください。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
3/15-18の間、東京大学で連続セッション「カルチュラル・スタディーズとの対話」に出席。いくつかのワークショップに参加しました。スチュアート・ホールは流石に面白かった。